糖尿病の方が健康に痩せるために!改善すべきポイント・対策とは?

前回の記事では、糖尿病の方が食事や運動など、生活スタイルを改善しているわけではないのに、急に痩せるのは危険なサインというお話をしました。

その原因は、持続する高血糖の影響でインスリンの働きが低下し、血液中のブドウ糖を有効活用できなくなる”エネルギー利用障害”です。

ヒトの体は、糖質からエネルギーを生み出せなくなる状態が続くと、代わりのエネルギー源として筋肉や脂肪を分解してアミノ酸や脂肪酸を作らざるを得なくなり、不健康な形で体重が減少してしまうのでしたね。

では、糖尿病の方が健康に痩せるためにはどのような点に注意し、改善していくべきなのでしょうか。今回の記事では、その対策についてまとめてみました。

糖尿病の方が健康に痩せるポイント①目指すべき体重の把握

みなさん、BMI(Body Mass Index)という体格・肥満度の指標を聞いたことがありますよね。

BMI= 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)で計算されます。例えば、体重が70kgで身長が160cmのAさんの場合、BMIは70÷1.6÷1.6=約27となります。

様々な病気にかかるリスクは、BMIが22の時に最も小さくなるというデータがあるため、この値が標準値とされています。一方、BMIが25以上になると、肥満と判定されてしまいます。

日本人の男性で肥満(BMI≧25以上)の割合は、20代が25.7%、30代が28.6%、40代が34.6%、50代で36.5%という報告もあります。(2016年国民健康・栄養調査より)

まずは、このBMIを計算して、ご自身の肥満度をチェックすることが対策の第一歩です。そして、理想的な体重(標準体重)が何kgなのかも確認しておきましょう。

標準体重は、先ほどのBMIの計算式にBMI=22と身長を代入し、体重を求めることで算出できます。標準体重(kg)=身長(m)× 身長(m)× 22となりますので、Aさんを例に計算すると、1.6×1.6×22で約56kgですね。その差は実際70kg-理想56kgとなり、何と14kgもオーバーしている結果となりました!

みんなの一歩(https://www.food.minnanoippo.jp/ctggeneral/s-01/)より引用

糖尿病の方が健康に痩せるポイント②急激な改善は逆効果

ここで大切なのは、焦らず、気負わず、無理せずに体重の改善を目指すことです。

極端に食事を減らすなど、急激なダイエットをすると、体が飢餓状態にあると認識して、脂肪細胞や筋肉を分解してエネルギー源を放出します。これは冒頭でお伝えした糖質のエネルギー利用障害と似ていますね。

無理なダイエットで一時的に痩せることはできるかも知れませんが、長期的には筋肉量が減少することで体が消費するエネルギー量は落ちてしまいます。

摂取するエネルギーが減っても、使うエネルギーが減ってしまえば、その効果は相殺されてしまいますし、むしろ体にとってはエネルギーの循環が滞って糖尿病を悪化させる可能性すらあります。

何より、そんな無茶な対策は長続きしませんし、いかにもリバウンドしてしまいそうですよね。

一般に、肥満の方は、まず2から3ヵ月かけて体重の3~5%の改善を当面の目標にします。先ほどのAさんの場合、数か月かけて2~3.5kgを目安に痩せることを目指すわけですね。もちろん、主治医から具体的な指示があった場合は、そちらの指示に従ってください。

減量の速度が遅い!こんなんじゃ理想体重になるまでに時間がかかり過ぎる!と思われた方もいるかも知れません。

ところが、数kg痩せるだけで、インスリン抵抗性は着実に改善することがわかっています。そもそも、肥満が糖尿病を悪化させるのは、肥大化した脂肪細胞がインスリンの効き目をにぶらせる悪玉ホルモンの分泌を増やしてしまうことが原因です。

体は急激な変化を好まないということを、みなさん経験的に知っています。体と折り合いをつけながら、ゆっくりと着実に痩せることで、インスリン抵抗性を解除していくことが血糖コントロールの一番の対策になるのですね。

糖尿病の方が健康に痩せるポイント③適切な食事・運動療法がキモ

残念ながら、健康に痩せるための抜け道や裏技はありません。適切なエネルギー摂取量と運動による消費のバランスを整えることが対策のキモになります。

体重1kgの増減は、なんと6,000~7,000kcalのエネルギーの蓄積、消費に相当します。1食80kcalの食べ過ぎで、1ヵ月に1kg体重が増える計算になります。反対に、1日200~250kcal分食べる量を減らすか、運動で消費することで1ヵ月で1kg痩せることが可能になります。

こう考えると、たかだが1kg痩せるのも容易なことではないし、月に1kg減ったら誤差範囲だなんて思わないで、ちゃんと喜ぶべきだとも思います。本当に日々コツコツとIN=摂取量を減らし、OUT=消費量を増やすことを積み上げるしかないのですね。

適切な1日のエネルギー摂取量は、身体活動量に応じた数値に標準体重を掛けて求めることができます。

  • 軽労作(デスクワークが多い職業など):25~30kcal/kg × 標準体重(kg)
  • 普通の労作(立仕事が多い職業など)   :30~35kcal/kg × 標準体重(kg)
  • 重い労作(力仕事の多い職業など)      :35~    kcal/kg × 標準体重(kg)

Aさんがデスクワークがメインの事務職だった場合、エネルギー摂取量は25~30kcal/kg × 56kg = 1400~1680kcal と計算されます。

医師はこのエネルギー摂取量を基準に、どの程度の運動療法が可能かを考慮しつつ、個々の患者さんの指示エネルギー量を決めているわけです。

もちろん、エネルギー摂取量だけでなく、その中身、つまり栄養素のバランスも大切です。糖質(炭水化物)は指示エネルギー量の50~60%、たんぱく質は20%以下を目安とし、残りを脂質で摂取するのが良いとされています。

とは言っても、言うは易し、行うは難しの体重管理です。私が薬剤師として、患者さんのモチベーションを上げるために心がけているのは、”フィードバック”です。

頑張って飲み薬やインスリンを継続していたり、検査値が少しでも良くなっていたり、食事や運動療法にわずかでも行動や改善がみられたら、積極的にいいね!素晴らしい!その調子!と声をかけ、喜びを分かち合いたいと思っています。

頑張った成果を認めてもらうことって、とても励みになりますよね。また、その成果を見える化して、自身でも変化を感じられるようにすることも継続のコツだと思います。以下のような表を活用し、体重の経過を記録する習慣を持つことはとてもお勧めです。

(株)マッシュルームソフト(http://msrsoft.com/hj/weightsheet/index.htm)より引用

まとめ

今回の記事では、糖尿病の方が健康に痩せるための改善ポイントや対策について取り上げてみました。

繰り返しになりますが、肥満はインスリン抵抗性を高め、糖尿病の発症や悪化の重要な因子であることが明らかになっています。さらに、血圧や脂質にも悪影響をおよぼし、心血管病のリスクを高めることにも疑いの余地がありません。

特に肥満のある糖尿病患者さんにとって”痩せる”ことによって得られる恩恵は極めて大きなものです。その一方で、我々医療従事者も、痩せることが簡単でないことは十分承知しています。

だからこそ、繰り返し痩せることのメリットと、健康に痩せるためのポイントを伝えつつ、励ましながらゆっくりと背中を押していきたいと思います。

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