糖尿病による眠気やだるさ、その有効な対策とは?

前回の記事で、食後の眠気の主な原因は血糖値の変動であることをお伝えしました。

糖尿病の方、特に食後高血糖タイプの方は、食後の血糖値の乱高下によってホルモンのバランスがくずれ、食後の眠気やだるさを生じている可能性があります。

今回は、その眠気やだるさを抑えるための対策についてまとめてみました。

どんな食べ物が眠気やだるさを生じやすいの?

私たちは1日3回の食事や間食など色々な食品を毎日口にしていますが、血糖値を上昇させるのはどのような食品なのでしょうか。

3大栄養素と言えば、炭水化物とたんぱく質、脂質(脂質)ですよね。

炭水化物は炭素(C)と水素(H)と酸素(O)からなる化合物のことで、糖質と食物繊維にわけることができます。

食物繊維は人の消化酵素では消化されにくいセルロースやデキストリンなどが知られています。

食物繊維も一部は腸内細菌によって脂肪酸となり、体のエネルギー源として使用されますが、食後の血糖値を上げる一番の要因は何と言っても糖質です。

(出典:糖尿病教室パーフェクトガイド)

上の図は、3大栄養素が血糖(血液中のブドウ糖)に変わる割合と速度を示しています。

糖質として吸収された栄養素は100%が血糖となり、食事の直後から1時間半くらいまでの血糖値を決める主な要因となっています。

一方のたんぱく質や脂肪は糖質から遅れて少しずつ血糖へ変化し、その割合もそれぞれ50%、10%と低いことがわかります。

糖質は小腸の内で消化酵素のはたらきによってブドウ糖となり、直接血液中に入って血糖となります。

一方のたんぱく質や脂肪は、アミノ酸や脂肪酸として血液中に吸収された後、体のはたらきによってブドウ糖に変換され、間接的に血糖となります。

この違いこそが、それぞれの栄養素の血糖値への影響の違いを生んでいます。

それならば、糖尿病患者さんの眠気やだるさ対策の鍵は、この「糖質」が握っているはずです!

ここからは、食後の高血糖を抑えるための糖質の摂り方について考えてみたいと思います

対策その一、糖尿病の方は適度な糖質制限をしよう!

まずシンプルな対策として、糖質制限という方法を考えてみましょう。

厚生労働省の 『日本人の食事摂取基準2015年版』では、1日に必要なエネルギーの摂取割合を、炭水化物が50~65%、たんぱく質が20~30%、脂質が10~20%としています。

よく食の欧米化などと言いますよね。確かに戦前の日本では米飯などの炭水化物の割合が高かったのですが、戦後の食生活の変化によって動物性たんぱく質や脂質の摂取割合が高くなり、糖質や食物繊維の摂取が減りました。

この食生活の変化や運動不足が日本人の肥満を増やし、2型糖尿病の増加につながったと考えられています。

肥満はインスリンの効きをにぶらせ(インスリン抵抗性)、糖尿病発症の重要な危険因子であることは、皆さんご存じの通りです。

糖尿病患者さんにおいては、2013年に発表された『日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言』において、炭水化物を50~60%、たんぱく質を20%以下、残りを脂質とすることが推奨されています。

栄養素の摂取割合や総エネルギー量(総カロリー量)は、年齢や性別、合併症や日常の活動度などを総合的に考慮して、医師が患者さんごとに設定します。

特に糖質の摂取量が多く食後高血糖タイプの方は、医師や栄養士と相談の上、糖質制限に取り組んでみてはいかがでしょうか。

ただし、過度な糖質制限によってたんぱく質や脂質の摂取割合が増えてしまうと、腎臓に負担がかかったり、高コレステロール血症の悪化など別の問題を引き起こすこともあります。

上記の提言では、総エネルギー摂取量を制限せずに炭水化物のみを極端に制限することは、継続性や安全性の面から薦められないとしています。

糖尿病の方は、主治医や栄養士とご自身にあった食事療法を検討し、無理なく続けられる範囲で実践してもらいたいと思います。

対策その二、どんな食品から糖質を摂るかも大切!

食品に含まれる糖質の量が同じでも、その種類によって食後の血糖値の変化に大きな違いがあることがわかっています。

最も血糖値を上昇させやすい糖質は何でしょうか?

答えはブドウ糖です。だからこそ、低血糖症状があらわれたらすぐにブドウ糖を摂取してください!と糖尿病患者さんにお伝えしているわけですね。

このブドウ糖50gを摂取し、2時間後までの血糖上昇度合いを100として、同じく糖質50gを含む食品を摂取した場合の血糖値の上がりやすさを数値化した指標に『グリセミックインデックス(GI)』があります。

GI値が低ければ同じ糖質量でも食後の血糖値は上昇しにくく、高ければ食後血糖値が上がりやすい。つまり、食後に眠気やだるさを起こしやすいと考えられます。

ちなみにブドウ糖の仲間である砂糖(ショ糖)は65、人工甘味料のアセスルファムカリウムやスクラロースなどは0となります。

以下に主な食品のGIを紹介します。

(出典:一般社団法人Jミルク リーフレットより)

高GI食品(70以上)の食品としては、白米や食パン、じゃがいもなどがあり、低GI食品(55以下)として、うどんやそば、牛乳などがあります。

高GI食品ばかり食べてしまう方への対策として、低GI食品をたまには献立に取り入れるなど、このGIを、メニューに選びの際に参考にしてみてはいかがでしょうか。

眠気やだるさの程度と、その直前の食事内容をメモしておけば、その関係が見えてくるかもしれませんね。

対策その三、糖質を摂る順番を見直そう!

近年、食事を摂る順番が食後血糖値に影響を与えるという研究データが集まってきました。

その一つとして、白米と魚、お肉を食べる順番が2型糖尿病患者さんの食後血糖値にどう影響するかを調べた、矢部らの研究を紹介します。

白米の栄養素はほとんどが糖質で、一方の魚やお肉は糖質をほとんど含まず、たんぱく質や脂肪を多く含む食品です。

その結果、以下のような面白い結果が得られました。

白米を先に摂取した場合は、食後すぐに血糖値が上昇し、血糖値が平均約250mg/dLまで上昇しました。

それに対し、魚やお肉を先にたべた場合は、血糖値の上昇が穏やかになり、血糖値の最大値も抑えられています。

この原因として、たんぱく質や脂肪の摂取による、”インクレチン”というホルモンの増加が影響していると考えられています。

インクレチンという名前はあまり聞きなれないかもしれませんが、食事に反応して小腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促し、間接的に血糖値を下げる大切なホルモンです。

胃腸に糖質が入ってくる前に、このインクレチンの分泌が増えてインスリンが出やすい状態にしておくことで、食後の血糖値を抑えることができるというわけです。

その他にも、食物線維は消化管からの糖の吸収を穏やかにするため、食後の血糖上昇を抑制できるという報告もあります。

まずは野菜など食物繊維の多いものを食べ、次にたんぱく質や脂質の供給源として肉や魚をいただき、最後にお米や果物など糖質を食べる。この日本の会席料理のような順番が食後高血糖の予防に有効と言われています。

この順番を変えてみるという対策は、次の食事から簡単に取り組むことができます。食後の眠気やだるさでお困りの方、ぜひ試してみてください。

まとめ

今回は、糖尿病患者さんの眠気やだるさの原因となる食後の血糖変動を抑える対策についてお伝えしました。

食後の血糖値を決める栄養素は”糖質”ということで、過剰な摂取を控え、低GI食品を取り入れること、食事の最後の方に糖質を摂るなどの対策をご提案しました。

大切なことは、主治医や栄養士と相談すること、そして何より、楽しく無理なく続けられることだと思います。

これらの対策をしても眠気やだるさが改善しない場合は、別の原因があるかもしれません。その場合も主治医に伝えてください。

食後高血糖の改善は心血管病予防対策という面からも、とても大切です。

この記事が、ご自身に合った食事療法を見つける手がかりになれば嬉しいです!

 

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