糖尿病の方が運動に取り組む際の注意点・適切な運動時間とは?

ご存じのとおり、運動療法は食事療法とともに生活習慣の改善にとても重要であり、糖尿病の方にとっては、薬物療法と合わせて糖尿病治療の3本柱となっています。

糖尿病の方が運動を継続することで、以下のメリットを得ることができます。

  • エネルギー消費の増加による高血糖、肥満の改善
  • インスリン感受性の改善
    (インスリンの効きが良くなる)
  • 高血圧や脂質異常症の改善
  • 心肺機能が高まる
  • 精神的な健康維持にもなる

 

また、糖尿病ではないけれど血糖値が高めという方にとっては、運動の習慣を取り入れることが2型糖尿病の発症予防にもつながります!

ただし、運動が体に良いことは分かっていても、具体的にどんな運動をどれくらい行うべきかについて、しっかりと把握できている方は少ないのではないでしょうか。

有効かつ安全に運動を続けていくにあたり、正しい知識をもっておくことがとても大切です。そこで今回の記事では、運動療法に取り組む際の注意点や運動の時間に着目してみました。

無理は禁物!運動開始前の注意点

糖尿病の方の場合、運動療法を開始する際には、あらかじめ医師のチェックを受ける必要があります。以下に、運動を控えるべき状況の例をあげます。

           (糖尿病の食事療法と運動療法- 無理なく続ける治療のポイント-より引用)

通常、血糖コントロールが特に不良(空腹時血糖が250mg/dL以上)の場合、運動療法を控えます。また、腎機能障害や網膜症、神経障害などの合併症があったり、心臓病を患っている場合には、運動によって病状が悪化したり、ケガの原因になる可能性があるため、十分な注意が必要です。

また薬剤師としては、薬物治療中の方にも注意をお願いしたいと思います。

特に、インスリン注射を受けている方や、スルホニルウレア薬(アマリール、グリミクロン、オイグルコン、ダオニールなど)、速効型インスリン分泌促進薬(ファスティック、スターシス、グルファスト、セイブルなど)を服用中の方は、運動中だけでなく、運動してしばらく時間が過ぎた後でも低血糖のリスクが高まります。

医師から、運動前にはインスリンの単位を減らす、内服薬の服用のタイミングを変えるなどの指示が出ることがありますので、その指示をしっかり守ってください。また、低血糖に備えて、運動をする際は必ずブドウ糖を携帯するようお願いします。

具体的な運動の種類や強度をどう考える?

運動の種類には、有酸素運動とレジスタンス運動の2つがあります。

糖尿病の方には、歩行やジョギング、水泳や自転車など全身の大きな筋肉を使った有酸素運動が勧められます。一方、筋トレなどのレジスタンス運動は、筋力や筋肉量を増やし、基礎代謝の維持や増加、関節を強くするなどの効果があります。

有酸素運動とレジスタンス運動の併用が望ましいのですが、まずは無理をせず、やってみたい!、やれそう!と思えるものからトライしてみましょう。

それぞれの運動や日常の生活活動で、どれ位のエネルギー消費効果があるかを知るには、アメリカスポーツ医学協会が提唱しているMETs(metabolic equivalent unit)法の活用が便利です。

安静に座っている状態のエネルギー消費量を1METsとした時の、各種運動や生活活動の強度を以下に示します。

     (出典:http://www.doumyaku-c.jp/event/site-jiten/shinkekkan/sikkan_06.html)

ウォーキングは2.5METs程度ですが、サイクリングは4METs、水泳は6~8METsと、運動強度が上がっていきます。運動強度は、以下のとおり大まかに分類できます。

  • 3~4METs・・・軽い運動や活動
  • 5~7METs・・・中等度の運動や活動
  • 8METs以上・・・きつい運動

このMETsを使用すると、消費エネルギー量を以下の式で簡単に計算でき、とても便利です!

消費エネルギー量(kcal)= 運動強度(METs)× 運動時間(hr)×  体重(kg)・・・式1
※求めた値に1.05をかけると、より正確な値になります

例えば、体重60kgの方が、30分間(=0.5時間)水中歩行(4METs)したら、消費エネルギー量は、4×0.5×60=120kcalとなります。

同じように、体重70kgの方が、15分間(=0.25時間)水泳(7METs)したら、消費エネルギー量は、7×0.25×70≒120kcalとなりますね。

1日の運動量としては、160~300kcal程度が適切と言われていますので、ご自身の運動計画を考える際に、参考にしてください。

運動するのに適切な時間帯や長さは?

糖尿病では、特に食後の急激な血糖の上昇が心血管病のリスクを高めることが分かっており、問題視されています。そのため、食後30分~2時間の間に運動を実施することが、この食後高血糖を抑えるために効果的と言われています。

ただし、これはあくまでも目安であり、一番大切なのは”運動を継続すること”です。運動する時間帯にこだわりすぎず、みなさん一人ひとりが、無理なく、楽しく、最も実施しやすい時間に取り組んで欲しいと私は思っています。

では、運動を継続する時間についてはどうでしょうか。運動持続時間は、糖質・脂質の効率のよい燃焼のために20分以上が望ましいとされています。

短時間の運動では、主に糖質がエネルギー源として消費されますが、脂肪を分解してできる脂肪酸がエネルギーとして利用されるには、一定の運動時間が必要とされます。

内臓脂肪の減少を目指す場合は、きつい運動を短時間おこなうよりも、中等度の運動をなるべく長く行うことの方が効率が良いと考えられています。

先ほどのMETsを応用すると、目標とする減量を実現するために、どのくらいの運動時間が必要かを計算することもできます。

例えば、現在体重75kgのAさんが、1ヵ月で体重を1kg減らす目標を立てた場合、毎日サイクリングを何分間頑張る必要があるのかを計算してみます。

体重を1kg減らすために7,000kcalの消費が必要ですので、1日の消費カロリー目標 = 1ヵ月で7,000kcal ÷ 30日 ≒ 230kcal となります。

運動時間(hr)= 消費エネルギー量(kcal)÷ 運動強度(METs)÷ 体重(kg)・・・式2
※上記の式1を変形しただけです。

式2に値を入れると、運動時間=230kcal ÷ 4METs(サイクリング) ÷ 75kg ≒ 0.76時間(約45分)と計算できました。

このように計算してみるだけでも、体重コントロールは時間をかけてねばり強く取り組むことや、運動だけではなく、食事も一緒に見直す必要があることを実感しますね。。。

私も最近デスクワークが中心で身体活動が低下し、その割に食事はしっかり摂っているので、生活を見直したいと思います(汗)

まとめ

今回の記事では、糖尿病の方が運動療法に取り組む際の注意点や運動の種類や強度、適切な運動の時間についてお伝えしました。

コントロール不良の高血糖や合併症、心臓病など持病がある場合は事前に医師と相談し、指示を仰ぎましょう。薬物療法を行っている場合は、低血糖に十分注意し、ブドウ糖を忘れないでくださいね。

具体的な運動については、1日160~300kcalを目安に、中等度の有酸素運動を20分以上続けることが推奨されています。

ご自身の取り組んでいる、もしくはこれから始める運動によって、どのくらいのカロリー消費が期待できるのかを計算したり、目標を立てる際にも、ぜひMETsを活用してみてください。

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